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世界のコーチングが日本へ伝わる!!
まだ“コーチングのはじまり”も読んでいない方は、ぜひ合わせて読んでみてください。
世界で広まっていったコーチング、どうやって日本に広まってきたのでしょうか?誰がどんなきっかけで、広めていったのでしょう?
コーチングが1997年に日本に伝わってから約22年が過ぎようとしています。そのコーチングも、今では、企業、教育、医療、士業、専門職、さらには個人に至るまで様々な人が学び、それぞれの領域で独自に活用、展開されるようになってきています。そして、最近、またコーチングに注目が集まっています。それはどんな期待から生まれているのでしょう?そんなコーチングの、日本での歴史を紐解いていきます。
日本にコーチングを広めたのはだれ?
日本では1997 年に伊藤守さんが設立したコーチ・トゥエンティワン(現コーチ・エィ) が、2000年に榎本英剛さんが設立したCTIジャパンが国際コーチ連盟(ICF: International Coach Federation)に認定された「コーチ・トレーニング・プログラム」を提供し始めました。それから約22年が経ち、同様のプログラムを提供している団体は、新たに4つの団体が加わり、合計6団体となっています。(※1)
コーチ・トレーニング・プログラム提供団体一覧(※2)
トレーニング団体名 | プログラム名 |
---|---|
株式会社 コーチ・エィ Coach A Co., Ltd. | Coach Training Program(CTP)/Coachacademia |
株式会社 コーチ・アイエヌジー COACH ING Inc. | Whole System Coaching |
CRR Global Japan合同会社 CRR Grobal Japan | Organization and Relationship Systems Coaching Program(ORSC) |
CTIジャパン(株式会社ウェイクアップ) Co-Active Training Institute | Co-Active Coach Training Program |
株式会社コーチング・システムズ Coaching Systems Inc. | Co-Creative Coach Training School |
一般社団法人 東京コーチング協会 Tokyo Coaching Association | TCA Coaching Program TripleA |
このトレーニングが紹介された頃は、トレーニングを受けていたのは、プロフェッショナル・コーチを目指す人がほとんどでした。やがて、マネジメントスキルとして日本でもコーチングに焦点が当たるようになります。そうすると、コーチングはパフォーマンスを向上させるスキルとして注目されるようになり、企業のリーダーやマネジャーは、このコーチングの手法を学習することが求められるようになりました。
ここで区別しておきたいことは、コーチとしてコーチングを提供すること(コーチングを『役割』と考える)と、他の役割においてコーチングの手法をスキルとして活用すること(コーチングを『スキル』と考える)とは異なります。コーチとしてコーチングを提供するということは、コーチ、クライアントとの契約関係を持ち、具体的な目標や成果を目指して特定の期間、パートナーシップを持って取り組むことです。一方、他の役割においてコーチングの手法をスキルとして活用することとは、現場において個人の成長を支援するために、リーダーやマネージャーがマネジメントスキルとして、コーチングスキルを活用することを示します。
なぜ日本にコーチングが広まったのか?
なぜコーチングが広まったのでしょう?コーチングのトレーニングが提供され始めた頃、日本のビジネス環境がどうだったか振り返ってみましょう。
ちょうどその頃、2001年にITバブルが弾け、日本全体の景気が後退していきました。今でも覚えています。私は内定を頂き喜んでいました。しかし、気づけば企業の株価は半値まで下がっていたのです。そして、入社してすぐに3%の給料カット、さらにはリストラがはじまりました。それから間も無くして、人事評価も実績評価に、給与体系も業績連動型に変わっていき、また、長時間残業も当たり前の時代でした。
多くの企業で業績回復のための施策が打たれます。その中でも日産が「上にも下にもはっきりとものが言えない」管理職の傾向を解決するため、2002年から部長・課長職を対象にコミュニケーション能力向上のための研修を行いました。その研修は他の改革と相まって業績回復に寄与したと考えられ、多くの企業がコーチングを注目するようになります。しかし、この研修では、コーチングの『役割』でなく『スキル』に焦点を当てています。この点には注意が必要です。このときに「コーチングとはマネジメントや人材開発の一手法である」という誤ったコーチング感が広まった可能性があると考えられています。
ただ、間違いなくこの時期に『コーチング』という言葉が日本に広がっていたのは間違いありません。
今、なぜコーチングが注目されているのか?
新たにコーチングがこの10年間で急激に注目されるようになっています。それは、めまぐるしく変化する世の中に、どれだけ早く対応できるかが重要になったこと、また、今までのやり方ではなく、新しい方法をいち早く学び、行動に移す必要が出てきたのです。それを解決する方法として、『スキル』としてのコーチングではなく、『役割』としてのコーチングに注目が集まってきました。
今までは、コーチングの『スキル』をリーダーやマネージャーが使えるようになることに焦点が当てられていました。しかし、コーチングのスキルは数日の訓練を受けただけで身につくものではありません。また、簡単な訓練を受けただけで行うコーチングは、相手への支援ではなく、わからない、知らないことを尋問することになりかねず、相手を傷つけ、自尊心を損なう可能性もあります。また相手をより混乱させることも少なくありません。その問題に多くの人が気づきはじめたため、『スキル』ではなく、『役割』としてのコーチングが見直されてきています。(※1)
その大きな変化を感じる出来事が2つあります。1つ目は、多くの経営者、自らが『コーチングを受ける』ようになってきたこと、2つ目は『個人がコーチングする』から『個人がコーチングを受ける』、さらに『チームでコーチングを受ける』ように変化してきているからです。
それは、目まぐるしく変化する世の中に対応するためには『個人』だけでなく、『チーム』、さらには『組織』全体で取り組むために、専門性を持ったコーチからコーチングを受けることの重要性に気づいた、または効果を実感している経営者や企業が増えているからではないでしょうか?
これから、コーチングに期待されていることは?
これからのコーチングに期待されることを考えるために、まず日本の現状を改めて調べてみました。
日本は2000年から労働力人口は減少(※3)し始めています。また、時間当たり労働生産性は47.5ドルでOECD加盟36カ国中20位です。主要先進7カ国でみると、データが取得可能な1970年以降、最下位となっています。(※4)
また、今後10年の間に平均引退年齢の70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万人の後継者が未定となっています。さらに、開業率も5.6%と諸外国と比較しても低くなっています(※5)
まとめると、これからの日本に必要なことは3つです。
① 組織の中で高い成果を生み出し続ける個人やチームを育て労働生産性を上げること
② 組織の特性の変化に合わせ、現経営者とともに後継者を育成すること
③ 創業を増やし開業率をあげ、次世代リーダーの育成と共に創業後の企業の成長を支援すること
これら3つの課題を解決するために共通して重要なことは、EQと呼ばれる感情的知性やそれに関連する対人関係スキルを磨くことです。この領域こそ最もコーチングが役立つところになります。(※6)
これが、これからの日本でコーチングに期待されていることではないでしょうか?
まとめ
日本にコーチングがどのように伝わってきたのかを紐解いてきました。さらにこれから期待されることについても考えてみました。
- コーチ・トゥエンティワン(現コーチ・エイ)とCTIジャパンから始まる
- 初期の頃、コーチングはマネジメントや人材開発の一手法として広がる
- コーチングは『する』から『受ける』へ、さらに、『個人』から『チーム』、そして、『組織』へ
- EQと呼ばれる感情的知性やそれに関連する対人関係スキルへの貢献が期待される
この変化の中で、みなさんがコーチングを導入する、もしくは受ける上で、知っておいて欲しいことは、コーチの技術だけでなく、専門性と経験が重要な要素になってきます。何かみなさんの参考になれば幸いです。
この記事を書きながら、私もコーチとしてさらに技術と専門性に磨きをかけ、経験を積み上げていこうと思いました。日々精進!!
<出典>
※1 Wikipedia コーチング
※2 一般社団法人 国際コーチ連盟 日本支部
※3 厚生労働省 労働力人口の推移
※4 日本生産性本部 労働生産性の国際比較
※5 経済産業省 事業継承・創業政策について
※6 コーチング・バイブル(第3版)
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